鬼籍に

 森村桂も死んだ。サガンも死んだ。少し前にはらもも死んだ。人が死んでも何とも思いはしないことにしている。誰にせよとりわけ好きなわけじゃない。だが中島らもの死去には少し揺るがされるものがあった。彼のエッセーなどを読むとどうしても他人とは思えない何かを感じていた。きっとそのせいだろう。あるいは自分がこの先も生きるとしたら、半分だけの栄光すらわたしにはないとしても、くたびれてどこかで彼のようにのたれ死ぬだろう。そんな気がした。とりわけ好きなわけじゃない、だからどうというわけでもない、だが何かが引っかかってしまったのも確かだった。らもも死んだし、一年前にはサイードも死んだ。チョムスキーはあんなに無駄に元気だというのに。二十歳前くらいの頃には三十にならずに死ぬだろうとほとんど確信していた。年々その確信は強まっていく。気がついたらいつの間にか、ジミヘンよりも、ジャニス・ジョプリンよりも長生きしていたのだな*1。わたしの二十代ももう少しで終わる。

*1:そういえばもう一人のジャニスはまだ生きているのだろうか