2006-03-01から1ヶ月間の記事一覧

好青年

来日中のリチャード・パワーズとお酒を飲む。パワーズは臙脂色のセーターを着てわたしの前に座っていた。好青年といった感じのひょろ長い男で、とても五十前には見えなかった。

いやに冷静なわたしもいて、感情のブレーカーも落ちたのだろう。この日常の結末までを眺めていた。足元から奈落に崩れ落ち、滑稽な道化芝居も突然に終わる。馬鹿馬鹿しく悲劇的な笑うしかない舞台の終わりを時計仕掛けの冷めた目で幕の途中から見通した。ど…

覚めない夢

それは突然に始まった。坂の方から人々が降りてきた。そこは田舎の山道で道の脇には崩れかけた小屋もある。日差しは冷たく右上の天から降ってきて土の地面にモノトーンの影を落とした。大勢が何かを言い合う声と鉄がぶつかる騒音と、坂は寒くて何を言ってい…

久しぶりの厨房

ものを作らなくなって久しいが、久しぶりに料理をした。食べてくれる相手がいないと料理すらしなくなるもので、実家に帰った時を除けば四年ぶり近い料理である(書いてから思い出したが、半年前にも料理をしている。研究室の後輩二人が遊びに来たことがあっ…

今日のこと

卓上時計が十二時の少し前で止まっていて、これから何かをしようと思い、けれど何もすることが見つからなかった時、わたしはさみしいのだなと気づいた。がらがらと口をすすいだ水道を閉めて、少しくたびれたタオルを替えて、それでやることもなくなった。思…

消えたもの

いろいろなしがらみが消えていく、と昨日書いた。新年からのこの日々は、いろいろなしがらみが目に見えて消えていった。遠くへ行った人々、連絡のつかなくなった知己たち、人々だけではない、身分証明や履歴書のそれぞれの欄に書けることも減ってしまった。…

私信と、そして私信以上のものとして

届かなかったメールに代えて。 Kくんへ(関東へ行った、阪神ファンのKくんへ)お久しぶり、どうしているかな。関東の水にもなれた頃かとも思う。去年の日本シリーズはあっという間に四連敗してしまって、なんだかあっというまに終わってしまったね。 たい…

半年ぶりに

お久しぶりです、ご無沙汰いたしまして申し訳ございません。 自分が半年ほどぼんやりしている間に、それぞれの世間ではそれぞれにいろいろなことがあったようです。秋頃はまるで呆けたようになっており、感情も感慨も動かない日々を過ごしておりました。阪神…