私信と、そして私信以上のものとして

 届かなかったメールに代えて。

Kくんへ(関東へ行った、阪神ファンのKくんへ)

お久しぶり、どうしているかな。関東の水にもなれた頃かとも思う。去年の日本シリーズはあっという間に四連敗してしまって、なんだかあっというまに終わってしまったね。
たいした用があるわけでもないけど、一応きみには報告しなければいけない気がした。
結局、論文を出さずに大学を辞めることにしたよ。
院に四年いて、これもあっという間の四連敗だったかもしれない。
すれ違うことがあれば、また声でもかけるよ。

 この日記と、この日記を含めたサイトを自分の知人に教えるつもりは始めはなかった。もともとひとにあまり見せるものじゃないような、自分の中の汚いものを書くつもりで(それでも読んでくれている、くれていた方々には申し訳ない物言いなのですが)始めたものだし、また宣伝するような必然性もない、自己満足の日記だった。ただ、日記に書いたあることを、ひとに説明しなくてはならないことがあって(口で説明するよりも、見てもらったほうがはるかに早いと思われた)ただ二人だけ、ここの日記のアドレスを教えていた。この二人ならば、まあ、そんな自分の内の汚泥を見せても、いいだろうと思われた。
 その内の一人は、二年前に就職し関東へ出た。ぶっきらぼうな物言いで、わりと誤解されやすい人だったと思う。自分に見えている範囲が全てではないだろうが、それでもわたしに見えた範囲では、そうした印象に反して、非常にひとに気を使う、繊細な、いいひとだった。彼との連絡も今はもうつかない。アドレスを教えてはあるが、ここをもはや見てもいないだろうと思う。だからこの私信が届くことはあるまい。だが、それを分かってなお、私信にすぎないものを書いてしまうのはつまらないことなのかもしれない。もう一人の、アドレスを教えていた人もこの春に北海道へいなくなる。彼もまた苗字がKさんだったので、つい宛名書きを足すことになってしまった。もう一人のKさんは、彼は中日ファンなので、これで区別はつくだろうが。
 大学も辞めて付近の人々もいなくなり、このところの日々にしがらみがなくなってゆく。そのせいかもしれないが、ここのアドレスをさらに二人に教えてしまった。彼らから広がっていなければ、わたしの知人にここを知っている人は、計四人になる。


3/12追記
携帯に彼の番号が残っており、無事Kくんと連絡がついた。彼はお菓子を作っていた。久しぶりにつらつらといろんなことを話した。