2006-01-01から1年間の記事一覧

書き始めてから、もう半日以上が過ぎた。それでもわたしは言葉を見出せないのか。わたしはなぜこんなものを書こうとしていたのか。けれども、何も前に進んでいない。 通りに人は少なかった。その一人一人が敵意を持っているようだった。すれ違う自転車、手押…

何もかもが、ちりぢりになった。身の回りのこと、自分の身に起きたこと、そんなささいな日常の全てがもう分からない。誰かが言ってくれた言葉、昨日の夢、かかってきた電話、どれひとつとしてその全体を思い出せない。なんでそんなせりふが出たのか、どこで…

日付さえ変わって、書き始めたからもう一日近く経とうとしている。けれどわたしはことばを見つけられないでいる。何を思ったのか、何を留めておきたかったのか。自分を切り刻んで、けれど何が変わるのか。もうやめてしまえばいいのに、なぜ、やめられないの…

パンを買って食べた。二日分の薬を飲んだ。 >

1965-7-23

あのままの自分で、部屋に帰ったよ わからない

階段

ビルの屋上の鉄階段は妙にはっきりとした輪郭で、足元から頭の上まで伸び続けていた。踏み台の隙間から切り取られた下界が遠近感をなくしてそこにいる。わたしは手すりをしっかりと捕まえて、平衡感覚を失った者の足取りでそれでも一歩ずつ登る。明け方の雑…

梅雨の日

子供が手の平を張りつけたのだろうか、窓は垢じみて汚れていた。喫煙の車両は大方満席で、けれど子供連れの姿はなかった。梅雨のうす曇りが山並みに重たく霧をかぶせていた。樹々から湧き上がる蒸気と混ざり合い、擬足を裾野に垂れ流して白く煙っていた。文…

礼法

先だって京都で酒を飲んだ際、男が女と酒を飲んで、それで女性が酔ってしまったなら、それは男が酔わせたということなのだ、ということをいった。いくらか時代錯誤な、女性蔑視的な言説かもしれないが、どんな事情があろうと、たとえば彼女の体調がその日た…

シュール

──先生んとこにホイットマンの詩集は、ありませんか。この前お借りしたボードレール全集は、まだ、すっかり読まないんですが、「ファンファルロ」はいいですね、それから「貧者の眼」「けしからぬ硝子屋」、散文詩の……。私は、詩を勉強したいと思うんですが…

もんじゃ焼き

きのうもんじゃ焼きを食べた。ちょうど人生の半分昔に初めて食べて、これが二度目になる。当時わたしは中学生だった。近所のお好み焼き屋で、名古屋では珍しいもんじゃ焼きを始めたというのでひとりで行った覚えがある。内装だけはきらきら立派で、けれどさ…

好青年

来日中のリチャード・パワーズとお酒を飲む。パワーズは臙脂色のセーターを着てわたしの前に座っていた。好青年といった感じのひょろ長い男で、とても五十前には見えなかった。

いやに冷静なわたしもいて、感情のブレーカーも落ちたのだろう。この日常の結末までを眺めていた。足元から奈落に崩れ落ち、滑稽な道化芝居も突然に終わる。馬鹿馬鹿しく悲劇的な笑うしかない舞台の終わりを時計仕掛けの冷めた目で幕の途中から見通した。ど…

覚めない夢

それは突然に始まった。坂の方から人々が降りてきた。そこは田舎の山道で道の脇には崩れかけた小屋もある。日差しは冷たく右上の天から降ってきて土の地面にモノトーンの影を落とした。大勢が何かを言い合う声と鉄がぶつかる騒音と、坂は寒くて何を言ってい…

久しぶりの厨房

ものを作らなくなって久しいが、久しぶりに料理をした。食べてくれる相手がいないと料理すらしなくなるもので、実家に帰った時を除けば四年ぶり近い料理である(書いてから思い出したが、半年前にも料理をしている。研究室の後輩二人が遊びに来たことがあっ…

今日のこと

卓上時計が十二時の少し前で止まっていて、これから何かをしようと思い、けれど何もすることが見つからなかった時、わたしはさみしいのだなと気づいた。がらがらと口をすすいだ水道を閉めて、少しくたびれたタオルを替えて、それでやることもなくなった。思…

消えたもの

いろいろなしがらみが消えていく、と昨日書いた。新年からのこの日々は、いろいろなしがらみが目に見えて消えていった。遠くへ行った人々、連絡のつかなくなった知己たち、人々だけではない、身分証明や履歴書のそれぞれの欄に書けることも減ってしまった。…

私信と、そして私信以上のものとして

届かなかったメールに代えて。 Kくんへ(関東へ行った、阪神ファンのKくんへ)お久しぶり、どうしているかな。関東の水にもなれた頃かとも思う。去年の日本シリーズはあっという間に四連敗してしまって、なんだかあっというまに終わってしまったね。 たい…

半年ぶりに

お久しぶりです、ご無沙汰いたしまして申し訳ございません。 自分が半年ほどぼんやりしている間に、それぞれの世間ではそれぞれにいろいろなことがあったようです。秋頃はまるで呆けたようになっており、感情も感慨も動かない日々を過ごしておりました。阪神…