2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

1965-7-23

あのままの自分で、部屋に帰ったよ わからない

階段

ビルの屋上の鉄階段は妙にはっきりとした輪郭で、足元から頭の上まで伸び続けていた。踏み台の隙間から切り取られた下界が遠近感をなくしてそこにいる。わたしは手すりをしっかりと捕まえて、平衡感覚を失った者の足取りでそれでも一歩ずつ登る。明け方の雑…

梅雨の日

子供が手の平を張りつけたのだろうか、窓は垢じみて汚れていた。喫煙の車両は大方満席で、けれど子供連れの姿はなかった。梅雨のうす曇りが山並みに重たく霧をかぶせていた。樹々から湧き上がる蒸気と混ざり合い、擬足を裾野に垂れ流して白く煙っていた。文…

礼法

先だって京都で酒を飲んだ際、男が女と酒を飲んで、それで女性が酔ってしまったなら、それは男が酔わせたということなのだ、ということをいった。いくらか時代錯誤な、女性蔑視的な言説かもしれないが、どんな事情があろうと、たとえば彼女の体調がその日た…

シュール

──先生んとこにホイットマンの詩集は、ありませんか。この前お借りしたボードレール全集は、まだ、すっかり読まないんですが、「ファンファルロ」はいいですね、それから「貧者の眼」「けしからぬ硝子屋」、散文詩の……。私は、詩を勉強したいと思うんですが…

もんじゃ焼き

きのうもんじゃ焼きを食べた。ちょうど人生の半分昔に初めて食べて、これが二度目になる。当時わたしは中学生だった。近所のお好み焼き屋で、名古屋では珍しいもんじゃ焼きを始めたというのでひとりで行った覚えがある。内装だけはきらきら立派で、けれどさ…