もんじゃ焼き

きのうもんじゃ焼きを食べた。ちょうど人生の半分昔に初めて食べて、これが二度目になる。当時わたしは中学生だった。近所のお好み焼き屋で、名古屋では珍しいもんじゃ焼きを始めたというのでひとりで行った覚えがある。内装だけはきらきら立派で、けれどさびれた小さな店でいつ行っても自分以外の客はいなかった。お金持ちの奥さんが趣味でやっているだけの店、とわたしの母は揶揄していた。その奥さんにはよくにた二人の娘がいた。ちょうど同級生になる双子の姉妹でたまにわたしをうかがいに来た。意識しすぎたぶっきらぼうな中学生の女の子らしい挨拶をして、そそくさ店の奥に引っ込んでいく。いつもそんな挨拶だった。その時食べたもんじゃ焼きは、何もかもぐちゃぐちゃとおいしくなくて、それから注文はいつものお好み焼きに戻ってしまった。ほどなくお好み焼き屋は潰れ、跡地に箪笥やらを作る小さな作業場ができた。飲食店から大胆な転身だった。そちらの方が向いていたのだろう、工場はわりと順調に軌道に乗ったようだった。
久しぶりに食べるもんじゃ焼きは記憶のなかの味とぜんぜん違っていた。ずいぶんうす味で、キャベツの甘味が素直に出ていて好感の持てる食べ物だった。すぐ焦げ付いてしまうのだけが難儀だが、鉄板の火を落とせばいい。食べた相手もよかったのだろう、かつてよりも繊細で、暖かで素朴な味がした。