冬瓜の夢

 ひどい夢を定期的に見る。血なまぐさいものは少ない。いや、それどころか、平凡でさえあるかもしれない。おそらく内容を誰かに伝えたところで、ありふれた普通の光景じゃないかと言われるだろう。だが、それは本人にとってはとてもひどい夢なのだ。おそらく、ひどいのは内容ではない。それがどうあれ、夢自体のなまなましさに耐えられないのだ。気がつくとかならず嫌な汗をかいて目が醒めている。暑い中、時刻はわからない、どこかで見たことのあるような女と寝ている。そろそろ冬瓜の季節だと独り言を言うと、そこに買ってあるという。丸々と大きな見事な冬瓜に、いまだ作ったことのない中国風の冬瓜のスープを作ろうと思う。丸のままの冬瓜をそのまま蒸し上げる豪快な料理で、(表面の細工をしなければ)取り立てて難しい技術はいらないが、恐ろしく手間もかかるし、丸ごと冬瓜を蒸せるような大鍋も必要だ。その冬瓜に適当に下ごしらえをして、いざ作ろうという段になって鳥がないことに気がつく。中国風である以上、鳥でスープを取らなければならない(さらに火腿があれば最高だ)。丸鳥とは言わないが、がらか、せめてスープが出るくらいの鳥のもも肉なりがないかと探すが冷蔵庫のどこにもみつからない。女は、冷凍庫から出来合いの(レンジで暖めるだけの)春巻きか、そぼろを平パスタで巻いたようなものを取り出して、この中身が鳥だから使えと言う。そんなものでスープが取れるわけがない。