サバイバルのために

 実家付近にはろくな飲食店はないし、家にあるものは食べられたものではない。多少でもマシなものを食べようと昨日から自分の食事は自作している。
 わかっていたことだが、実家にはろくな素材がない。基礎調味料も惨憺たるありさまだ。近所のスーパーも悲しくなるようなものしか置いていない。お盆だということを差し引いてもこの鮮度はあまりではないか。もともと食文化に限らず、文化という点では日本の大都市の中では最低クラスの都市なのだが、目をおおいたくなるほど酷い。ファッションからなにからなにまで、名古屋は全てにおいて泥臭い。高校生のころまでわたしは何を食べていたんだっけ。

  • 昨晩

 鶏肉と青梗菜、オクラなどの炒め物
 冬瓜のスープ

 がらなり安い骨付きの鶏肉なりがあればよかったのだが置いていない。肉も脂の色が変わりかけたようなものしかない。仕方なく比較的マシそうな胸肉のパックを一つ買う。チンゲンサイはなかなか悪くないのがあった。この田舎都市にしては珍しく、育ちすぎていない10センチ程度の大きさのもの。よくスーパーに並んでいる15センチほどにも育ったチンゲンサイは食べられたものではない。あれは小さい内に収穫する野菜なのだ。他、色々物色したが食べる気のうせるようなものしかない。まあこの劣化都市ではしかたがない。オクラ、冬瓜、小ぶりの生しいたけ、もやしなどを買う。
 案の定パックの鶏肉は、見てくれがまだマシなのは表側だけで見えない裏側になると腐りかけたような色の脂だらけの肉である。ともかく脂をこそげ落とし、小口に切ってこんぶで出汁を取った鍋に入れる。下ゆでか湯引きしてからの方がよかったかもしれない。だしがらの鶏肉を鍋から上げて、水面に浮いたアクと油を徹底的に取り去る。皮を剥いて大ぶりに切った冬瓜を、別の鍋で塩ゆでする。皮は薄く、中の種の部分は厚く捨てるのが冬瓜をきれいに仕上げるコツである。軽く透き通ったらゆであがり、鶏肉でダシを取ったスープに入れる。ごま油で軽く炒めたニンニクとショウガを油ごと鍋に入れる。生しいたけの軸で代用したが、干ししいたけのダシを加えてもよい。お酒(ろくなものがなかったので省略)、オイスターソース(同)、しょうゆ、塩で味を整えてしばらく置けばスープは出来あがり。かたくりなどで軽くとろみを付けるといっそう中華らしく仕上がる。
 炒め物の方はまず野菜の下ごしらえ。しょうがは下ろさず、筋を断ち切るように透き通るくらいの薄さにスライスする。にんにくはひと手間かけるなら、皮をむかずに丸ごとオーブンで強めに焼いてから、中身を取り出して使うのが一番美味しい(にんにく類のペーストは必ずこの方法で作らなければ味が落ちる)。涙が出そうな話だが、実家には冷凍にんにくしかなかったのでしかたなく小切りにする。鷹の爪は種を捨てておく。しいたけは小切り(軸はスープに使われた)、オクラは丸のままか、へただけ落とす。間違えても切ってはならない。オクラはなるべく丸のままに近い状態で食べること。チンゲンサイは一口サイズにやや大ぶりに切る。ナスは櫛に切る。暇があればモヤシのひげは全部取って捨てておくと味がすっきり仕上がる(面倒なので省略)。油をよくなじませた中華鍋に多めにごま油を取り、にんにく、鷹の爪を炒める。油に匂いがうつった頃合でがらを捨てる。そこにスープの出汁に使い油も味もほとんどなくなった鶏肉を入れる。臭みのあるような鮮度の悪いものだったので、いっそだしがらでいいだろう。色がほんのりついた頃に残りの具材を入れてさっと炒めたらできあがり。チンゲンサイだけはあらかじめ油通ししておくと味がよいが今回は省略。もやし、チンゲンサイ、そしてなによりオクラは絶対に火を通しすぎてはならない。炒めあがる寸前に、コショウ(というか、それしかなかったのだ)、塩、しょうゆを振る(実家のしょうゆはアミノ酸入りのものだった)。これだけでは味がやや薄いので、冬瓜用に取ったスープを少し加えている。良質なオイスターソースがあれば酒で溶いて使うとよい。

  • 本日

 ホタテとチンゲンサイの豆鼓(トウチ)炒め
 冬瓜のスープ(昨日の残り)

 冷まして冷蔵庫に入れておいたが、鳥で取ったスープは今日がたぶん限界だろう。それを暖めて飲む。炒め物の方は昨日とほぼ同じ組み立て。違うのは鳥の代わりにホタテをつかったことと、味付けをニンニク、ショウガなどからトウチに代えたこと。あまりにロクな調味料がないのでトウチを買ってきたのだ。使い方は丸のままのなら砕いて酒で練る、すでに練ってあるものなら軽く酒で溶いて混ざりやすくしてやる。ニンニクとあわせてもよいが、これはむしろネギなどの方がよく味があう。ナスにもよい。
 なお、もやしは昨日使いきってしまった(当然、この季節二日ももたない)ので、なし。チンゲンサイ、オクラ、ナスがメイン素材である。