き晴らし、飛び石

 昔からネットを散歩するように、色々見て歩く癖がある。
 最初に踏み出すのは、何か理由や必然があって訪れたり、調べたサイトだが、そこからリンクをたどったりしているうちに、まったく当初の目的やわたしの身の回りとは関係のないようなサイトに行き着く。グーグルができてからはさらに便利になった。何か理由があって調べた言葉に、たまたま(たいていはあまり関係がなく)ひっかかってしまったサイトから、順にめぐっていく。グーグルを知らなかった頃はグーを使っていた。その前はどうしていただろうか、まだインターネットという言葉も知らず、ニフティパソコン通信をしていた頃はどうだっただろうか、あまりよく覚えていない。似たようなことをしていた気がする。
 辞書や辞典を引くときも同じだ。最初に調べた言葉から、ついついまったく関係のない項目に飛んでいき、そのうちに何のために辞書を開いたのかも忘れてしまう。紙の辞典でもコンピューターでも関係がない。電子辞書の方がリンクをたどり、すぐに関連する言葉に行けてしまうという危険があるが、紙の辞書は紙の辞書で、引いたはずの言葉と同じページにある別の言葉に気を取られてしまうという罠がある。辞書を引くのはまことに難しい。時間の限られているような時はまさに危険地帯に飛び込むようなものだ。
 この日記をつけるようになって、こうした危険はさらに増えるようになった。自分の書いた文章には、多かれ少なかれ何かのキーワードが含まれている。そして恐ろしいことに、そのキーワードごとにどこかへリンクがつながっているのだ。ついたどっていってしまうではないか。他の人の日記に行かずとも、キーワード自体の説明文を読むのもまた楽しい。しばしばただキーワードだけが登録されており、説明と言えるようなものがないようなものもあるが、これはいただけない。こういうのを見るとがっかりしてしまう。
 キーワード以外にも、自分の日記にどこから人が飛んできたかを見ることができる。リンク元という名前で集計されているらしい。いったい誰がどこからなぜここへ迷い込んだかは知らないが、それを見るのもまた楽しい。たいてい理由はよくわからない。
 おとなり日記というものもある、何がどうおとなりなのかはよくわからない。更新時間がたまたま重なりあったとか、そういうのであろうか。これを見てみるのもまたよい。
 このように日記は危険がいっぱいある。さらに訪ねて行った先にも、同じようにキーワードやおとなり日記があったりするのだ。たいていの人のはコメント欄から見ることができる。これに迷い込むと際限なく、日記を辿り続けていたりもする。
 ただ困るのは、特定のジャンルのことしか書いていない日記に迷い込んでしまった時だ。たいていの人は、自分の趣味のこと以外にも何かしら書いてはいるもので、それに飽きたらそうしたキーワードから抜け出すことができるのだが、いくつかのジャンルにはそのことしか書けないような人たちがいるらしい。こうした連鎖にはまり込むと、そのジャンルのことしか書かれていないようなものを、延々巡らされることになる。キーワードだけでそこから抜けるのは難しい。具体的に言えば、アイドルオタクたちが一番この傾向がひどい。書いてあることもくだらないことがほとんどだ。この袋小路に迷い込むとなかなかに抜け出せない。次にひどいのは技術関係の日記か。ネット技術やその他のコンピューター技術についてだけ延々書いてあるのが多い。これもなかなか抜け出せない。アイドルにせよ技術にせよ、読んでいて面白いものもあるのだが、そうした人の日記にはたいていその分野以外のことも、結構たくさん書かれている。以前にアイドル中心の日記で非常に面白いものがあった。ついその方が日記をつけ始めた日から、半年分ほど全部読んでしまった。半分くらいはわたしにはまったくわからないアイドルについてのことであったが、それ以外の部分だけでなく、いやむしろ、その分からないアイドルのことを書いた部分が非常に面白く読めた。こういう体験はあまりない。
 ふと疑問に思ったのだが、このキーワードというのがどういう風に貼られているのかわからない。自分で日記を書いているとき、これはキーワードとして貼られるだろうと思ったところが貼られていないこともある。また、こんなキーワードが存在していたのかとびっくりしたこともある。単語の途中で本来まったく関係のないようなキーワードに貼られていることもある。こういうのは一番面白い。自分の知らない言葉に行きつけたりもする。しかし貼られていると思ったものが貼られておらず、そもそもキーワードとして登録さえされていないこともあるのは悲しい。そんなたいした言葉ではないが、その単語を日記に書くような人をちょっと見てみたくもあったりするのだ。キーワードを自分で登録したり、編集したりもできるようなので、やり方が判ればこれからそういうことがあったなら、何か登録してみようとも思う。
 勢いだけで適当に書いていたら、随分と話題が逸れてしまった。こんな風にネットを巡るのは、くだらないことであるかもしれないが、わたしにとっては結構気晴らしになることなのだ。それこそ飛び石をつたって庭を見るようなものかもしれない。

http://www.miwa-sangyo.com/main/tobiishi01.htm