トリックスターの矜持

 わたしは悪戯好きである。ウソをつくのも大好きである。他人から見たら他愛もない、毒にも薬にもなりはしない、ただ呆れて笑われて、それでおしまいのちょっとしたことを用意周到に計画し、仕事とか勉強とかにはけっして払いもしないような労力とそれに費用もかけて悪戯をするのが大好きである。
 それが昨日その悪戯で他人に負けた。それも普通の常識人に負けたのである。わたしと同様くだらぬことに血道をあげて、ほんの一瞬人の度肝を抜いた後、呆れて笑われることに命をかけているような、そんな人種同志であれば負けたと思わされたことはいくらでもある。だがそうでなく自称も他称も小市民であるような、常識的な模範生にはめられた。わざわざ時差まで調べた上で国際電話で携帯にまで悪戯電話をかけてきた。この屈辱はプライドにかけて必ず晴らされなければならない。