朝六時前後の妄想

 怖い夢を見た。
 しばらく放心していた。集めた布団をひざの上に握り締めまだ暗い部屋は大波に揺れてわたしはもう目覚めているのだ、これは夢だったのだと、必死になって、しばらく自分に言い聞かせていた。身体の重さはまだ戻らなかった。浮かびそうになるのを必死でこらえた。両手の中のくたびれた綿は黴の臭いと湿気の重量を忘れていた。申し訳程度に壁に張り付く小さな曇り硝子の窓は北向わずかに明るくなり始めていたが部屋に光が入るほどではなかった。影の中に金属棒の冷たさが曖昧な濃度で浮かび、やがてそれが突き出た自分の足だと気づいた。この風景はいつ見たものだったか。
 朝の寒さを思い出しもう一度布団をかぶった。働かない頭でにっかつロマンポルノグラフィティとか言ったらどちらのファンも自分の大切なものをレイプされたような気持ちになるのだろうなと考えようやく目が覚めた。