方針

 なるべく小さな言葉を書こうと思う。鉛筆を支える、人より短い三本の指でつまめるくらいのことを書こうと思う。わたし自身にしか分からないことになってもよい。誰からも興味をもたれないくらいでいいと思う。わたしも誰にも興味がないのだから。顔を知っている人々、顔も知らない人々、たまたまどこかで出会っただけの、あるいは出会うこともなく遠くどこかにそんな人がいるだろうと勝手にわたしが思っているだけの人々。たまに挨拶を交わす煙草屋の老人にも、大学の事務の受付にも、たまたま同じ年に同じ研究室に入った人々にも。わたしは何も持てないだろう。誰ひとりにさえ。誰もわたしを見なくていい。考えることと待つことを、わたしはやめようと思う。