引越し前夜

いよいよ、明日が引越し当日になる。
なんだかんだと回りに迷惑をかけながら、長い時間をここで過ごした。この日記も、この部屋からは今日が最後の書き込みとなるだろう。もちろん実家に戻ればまた、すぐ回線をつなぐので書き込みはできるのですが……。
自分が自ら嵌まり込んで言ったような鬱屈と、この箱はまるで同期していたかのように思われる。部屋自体は、たぶん、好きではなかった。だがこの町と、この陰鬱な部屋での一人暮らしは、好きだったのだろう。

そういえば、ここの住所は、本当かどうか分からないが聞いた話によると、湯川秀樹がかつて住んでいた所らしい。少なくとも、かなり近くなのは確かで、町内には歌碑も残っているとか。

幸せだったのだろうか? 自分はこの部屋、この場所で暮らせて、幸せだったのだろうか? 「ここ」に惹かれているのは確かだろう。幸せなこともあった。不幸なこともあった。そのどちらも重たく残っていた。