巣穴

 わたしには帰るところがない。住むところ、寝るところがないという意味ではない。自分が自分の演技をせずにただの自分であることを許せるようなところがないということだ。だから一人が怖い。飼い主をなくしたペットのようなものだ。人と出かけるといつも帰りたくなくなる。
 だからこそ、人といるのもそして人と出かけるのも恐ろしい。またすぐに一人にならなければいけないことはわかっている。なのに情を持っていかれるのはたまらない。だから人と会うときはいつも離れている。心も距離を置くようにしている。こんなわたしを見て人は冷たいと言う。