高校時代のこと

 中高通った私立学校は医者の子弟が多かった。18までわたしが暮らしたあの巨大な村社会では、この高校を出て地元の国立大医学部に行かないと、たとえ東大を出て医者になっても開業することができない。地元の医師会がそうさせないのだ。なので同級生は地元の医者の息子ばかりで、みな医師を目指していたが、わたしは死んでもなりたくなかった。今思えば目指しておけばよかったのだが。幸い両親は高校出の教養もないサラリーマンと自営業で、医者になる必然はなかった。
 同級生たちはみなもう医師になっているのだろうか。医師を目指すものは多かったが、学力となにより人間性において、とても医師など向いていないようなのが大半だった。とくに高須クリニックの院長の甥子はひどかった。知障特有の雰囲気のある馬鹿面で、中身はその顔立ち以上に馬鹿だった。そしてその頭の出来以上に、性格の出来は悪かった。だが一度も留年することもなく無事高校を卒業していった。私立高校とはそういうものだ。彼よりテストの点はよく、それでも留年させられた生徒はいくらでもいるが、金を持っている家の子どもは絶対に留年しない。まして親がPTA会長ならなおさらだ。同じことは私立医大にも言える。彼らのような医者の子弟のための大学がいくらでもあるのだ。そこの教授たちが国家試験の採点もする。彼らの将来は輝かしく保障されている。