客観的にもなれなかったこと

 またいつものように置いていかれてしまった、という寂莫感をあたためながらそれからしばらく銀色の灰皿を眺めていた。ここ数日ほど、相当調子が悪いようだ、この時まで自覚はなかった。
 わたしにしては珍しいことだ、ある程度以上調子がよくない時にはほとんど常にその自覚があると思っていた。考えてみれば先週の末ごろから、妙に誰かに会いたくなったり、あるいはどこかに消えたくなったりもしていた。いつものように、調子の悪さの表れだろう。人恋しくなる時はかえってそれだけ他人から距離を置いてしまう、消えたくなるような時も、だが、しかしどこに消えればいい、もともとわたしはどこにもいないようなものではないか、これからどこに消えられるというのか。調子がだいぶ悪い。何かがしっかりと書けている気がしない。少しどこかに出かけてこよう、煙草ももうすぐ切れそうだ。