取るに足らない怒り

 ときどきくだらないことに腹が立つ。この間各国の壜ビールを置いているのが売りという店で、隣の客が偉そうに薀蓄をたれ、ありがたがってドイツビールを飲んでいた。こんな店でピルスナーを飲んでどうする。
 後輩たちがビートルズの話をしていた。ジョンが好き、というのも少々カンに触るがどれだけ好きかを語った挙句、でも白盤聴いたことないの、とはどういうことか。まあ腹を立てるわたしも大人気ない。
 もう数年前の話だが、大学のゼミで文学のリテラシーという概念をならった。本来リテラシーというのは文字が読めるか読めないか(文盲であるかどうか)という話だが、論者によると文芸にもリテラシーのようなものがあるという。つまり文学作品がわかるかどうかという話だ。この概念は気に食わない、と授業後友人が言っていた。わたしも彼の意見に全く同意する。読めない奴には何を言っても仕方がない、とお決まりの言葉に甘える批評家や作家には軽蔑を覚える。だが最近そこらで似たような論調がまかり通っているのが腹立たしい。
 たまに入るパスタ屋でドライトマトのスパゲッティを頼んだら、どうやら素材が切れていたらしい、生のトマトで品が出てきた。イタリア料理をなんと心得ているのか。
 まだ腹の立つことはいろいろあるが、今はこのあたりにしておこう。全部くだらないことである。