独白する失調

 長い話になりそうなので自販機で買った小ぶりのお茶を半分くらいとショートホープの一本分の覚悟を決めた。長い話というのはこれから書こうとしていることで、もちろん覚悟が必要なのはそれを書いているわたし自身のことである。どうも、どうしようもなくあちこちに飛んで消えていくような、実りのなさそうな、ただただ長い話になってしまいそうな予感がする。あまり格好のいいものではないが、それでもわたしにとっては今しておかなければならないことなのだろう。
 しばらく前から小出しに書いていたようにあまり調子がよろしくない。いつも通りに調子が悪いならそれでいい(よかないけど)のだが、今の調子のよろしくなさ、というのはわたしにはあまり馴染みのないよろしくなさなのである。例えば気分が滅入り酸素の乏しい静かな沼の中へ心が溺れていくような、そんな調子の悪さなら、厄介だけれど顔なじみの貧乏神で、お茶の出し方もてなし方は心得ている。ある意味わたしにとってはリズムの一部で、もちろん困ったものではあるが、ひょっとすると頼っているところもあるような関係の相手なのである。だが今回は、どうも新顔さんである。どう対応していいのか分からない。
 どうも困ったことになっている。かなり困ったことになっている。そして自分が困っていることにわたし自身いらだっている。調子の悪さの出所がどうもつかめていないのだ。一見した限りの印象では、そんなにたいしたことではなさそうだったが。この印象は今に至っても変わらない。少なくとも、いつもの、まさに万力で締め上げられる沈黙した呼吸困難の苦痛と比べれば、本来たいしたものでもない、それこそ子供のような敵であろう。だが、わたしを徹底的に打ち据える力も有無を言わせず圧倒する重みももたないこいつが、妙にわたしのいつものペースをかき乱す。なぜかいつもできていることができない。どうも自分らしくない。
 とにかく何も分からない。少し頭を冷やしてみる。落ち着いて、客観的に。落ち着けないなら、いっそ暴走した思考の赴くままに。分かっていないこと自体が、自分のいらだちのひとつであろう。まず自分がどうなっているのか分かっていない。今、どんなふうになっているのか。何をしているのか、何が失調したのか、何をしたいのか。周りで起きているおかしなこと。自分が原因なのか。それとも相手が原因なのか、何かの偶然やたまたまか。あるいは何もおかしなことなど起きててはいなくて、おかしくなったわたしの目が勘ぐりすぎただけなのか。原因、もし原因があるとすれば自分のこの失調の原因、そして対応策。何か対応があるはずだ。きっと。