アップルパイの暮らし


 ・・・しかしそんな林檎嫌いにも一つの転機が訪れた。二十歳くらいのことである。リンゴ農家の出身の女の子とつきあった。彼女はもちろんリンゴ好きである。もはや好きというよりも日常の一部に組み込まれている。季節になれば実家からは各種のリンゴが送られてくる。わたしは嫌々リンゴ漬けの日々を送った。あまりおいしいとも思わなかった。(後略)